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カラタケ日記

派遣社員から契約社員になって9年経過。思いついたことを書いてます。

ルポ・警備員は見た 派遣作業員が働く大手倉庫会社の労務管理 ID:c0eihu

2008年にJanJanニュースに投稿して掲載された記事です。

ルポ・警備員は見た 派遣作業員が働く大手倉庫会社の労務管理
JanJanニュース    辛島武生2008/10/14


大手倉庫会社で11ヶ月間、作業員の入退室を管理する警備員のアルバイトをした。最も就労が不安定な日雇い派遣の作業員が最も喫煙率が高い。国民年金も払えない作業員が多い。倉庫会社は業績とにらみ合わせて作業員をどんどん減らしていく。「経営判断」には、そこで働いているのが生身の人間であることなど全く考慮になかった。


金属探知機で入退室をチェック

 2007年11月から2008年9月末まで、大手S倉庫内で作業員の入退室管理を行う警備員のアルバイトをした。出入口に設置された金属探知機を使い、退出者をチェックする仕事だ。作業員はもちろんのこと、取引先の顧客であっても倉庫内から退出する際は、必ず金属探知機を通過しなければならない。例外はない。
 

 警報が発報したらハンディタイプの探知器を使用して、より詳しい検査を行う。空港で飛行機搭乗の際、行われているのと同様の検査体制だ。1年半前に建てられたS倉庫の顧客は、パソコン周辺機器の大手メーカー。大手量販店数社からの発注伝票によって作業員がピッキングし、発送する物流倉庫として機能している。アイポッドやメモリーなど、手の平サイズの商品が数多くあるため、盗難防止の目的で金探が設置されていた。

 165人と31人。今年9月時点の倉庫内で働く作業員の男女の数だ。割合にすると5.3対1となる。そのうち、派遣業者の正社員は男25人、女4人。

 男140人、女27人の計167人が、派遣作業員またはアルバイトだ。1人1人に確認したわけではないので正確な数字ではないが、大幅には外れていないと思う。

男性は7割、異常に高い喫煙率

 ところで、タバコだ。見ている限りでは、男女とも喫煙率が高い。正社員を含めた男性作業員の約7割、女性作業員の約4割が喫煙者だ。

 どうして分かるかというと、タバコや菓子類を包む銀紙にも金探が反応して発報する。そのため、ポケットから取り出して、携帯などと一緒に直前のテーブルに置いてもらう。だから、目視で喫煙者がどうか確認できる。低く見積もっても男6割、女3割以上が喫煙者だ。

 日本たばこ産業の「平成19年全国たばこ喫煙率調査」によると、成人男性の喫煙率は40.2%だった。そのうち30歳代がもっとも高く47.8%だ。

 一方、女性の喫煙率は12.7%で、最も高い数値が30歳代の18.9%となっている。この調査と比べると、S倉庫作業者の喫煙率約3割は高い数字だといえよう。作業員の主力は男女とも30歳代だ。

 喫煙率は、ホワイトカラーよりブルーカラー、高所得者層より低所得者層、高学歴層より低学歴層のほうが高い傾向が世界的に示されているという。 

 いくつかの日雇い派遣の現場で働いた私の印象としては、日雇い派遣作業者の喫煙率はたばこ産業の調査が示した数字より、かなり高いと感じた。ただし、大卒が多いと目されるIT関連業務専門の派遣作業員の喫煙率は、他の派遣現場に比べ低かった印象を持っている。 

 ブルーカラー・低所得者をキーワードにすると、派遣作業員の喫煙率が高いのは世界的傾向から外れてはいないことが分かる。

 タバコの害が健康に及ぼす影響は、くどい位にアナウンスされている。職場内での分煙もかなりの割合で進んでいる。したがって、嗜好品として扱われるタバコの喫煙は、最終的には各個人の考え方だとも結論付けられよう。


健康診断さえ受けられない日雇い派遣

 また、健康管理に対する職場ごとの取り組みの差もあろう。派遣作業員でも健康診断は受けられる。S倉庫の派遣作業員も定期検診を受けていた。

 健康管理に対する意識が高い職場であれば、雇用形態(正社員、アルバイト・契約・派遣社員など)に関わらず、健康診断を受けることができる。禁煙指導などを積極的に実施することで、そこで働く人の健康が保たれ、結果的に生産性の維持・向上につながるだろう。健保組合を持つ大手企業であれば、医療費負担の軽減にも役立つ。

 しかし、日雇い派遣の場合は対象から外される。私が以前、日雇い派遣の作業員として働いていた製造工場では、検診を受けることができなかった。長期契約(といっても1カ月)の派遣社員は受けていたので、日雇い派遣として働く作業員は、自身で健康管理するしかない。

 ところが、その日暮らしの日雇い派遣は、国民健康保険の保険料を払っていないケースも珍しくない。センセーショナルな表現をすると、日雇い派遣の関心は日々を生き抜くことにあり、「健康」ではない。その日を生きることが当面の目標となる。そうした意味で「健康」とは、「余裕のある生活者の関心事」ともいえよう。

 貧弱な食生活をおくっている日雇い派遣は、近い将来に高い確率で成人病の発症が予想される。日雇い派遣が放置されると、国の医療費負担が増加し財政圧迫の一因となることが予測されよう。


国民年金加入など「とんでもないこと」

 さらにいえば、国民年金の加入などとんでもないということになる。派遣社員ではないが、職場の同僚だった45歳のKさんは、年金を払っていない。長年、建築現場で働いてきたが、作業中のケガで半年間入院。その後、ケガは直ったが、身体に負担のかかる仕事は困難になったため、警備会社のアルバイトに応募して働いている。

 労災が適用されたので入院費と当面の生活費はなんとかなった。「これから先の50歳、60歳とやれる仕事は警備しかないですよね」と私に同意を求める。最初の就職で厚生年金を4~5年かけただけ。その後はまったく払っていない。いつもため息ばかりついていた。私は、この先どうするのか、とは聞けなかった。

 アルバイトでも社会保険の加入は可能だ。警備会社と交渉する余地はある。しかし、その場合、原則として給料の月払いが前提条件となる。週払いで受け取っているKさんは、その分を1週間で使い切ってしまう。最終日には、数百円しか残っていない。パチンコや酒が欠かせないからとも聞く。貧困者の中には、Kさんのような自身の生活態度が原因となっている例が少なくないのも事実だ。

 日雇い派遣に登録しているCさん、フリーターのIさん、2人とも30歳を過ぎているが年金はかけていない。「俺たちが貰えるころには年金制度は崩壊していますよ」と言い放つ。そうかもしれないが、そうでないかもしれない。

 年金の負担は、将来の自身のために払うのではなく、現在の制度を維持するためだという認識はない。この国の将来に対して、疑問だけが大きく膨らんでいく。今の生活を維持するだけで精一杯の彼らに30年先の未来は描けない。確かなことは、今が暮らしにくいということだけだ。


倉庫で10時間働いた後は居酒屋でバイト

 格差社会の中で貧困層に位置づけられて暮らす人たちの声は、思ったより悲痛ではない。大部分の人たちは、叫んだりしない。そんな、みっともないことはできないと自身に言い聞かせているかのようだ。懸命に働かされていて、不満を口にする余裕がないのかもしれない。

 昼1時から、物流倉庫でピッキング作業をしていた20代のB子さん。10時間働いた後は、居酒屋で洗い場のバイトだ。ヨロヨロと歩いているので「どうしたの」と尋ねると、「眠い」という。「頭が割れそうに痛い」という時もあった。でも、陽気だ。鼻歌交じりで金探の私の前を通過していた。

 腰痛の持病がある50代のEさん。ピッキング作業の中で、中腰の姿勢がキツイと嘆く。お盆休みが続いた時は、アルバイトで警備の仕事がないかと私に尋ねてきた。飛ぶように歩き、みんなを追い越していく。朝、コンビニで買った弁当を手に提げてやってくる。

 コンビニの賑わいをみていると、錯覚に陥ることがある。朝、昼時、そして深夜、ホワイトカラーもブルーカラーも同じように、おにぎり、弁当、サンドイッチ、飲み物などを手に、レジ待ちしている。みんな大差ないな、と思う瞬間だ。同じようなものを食べている。年収1,000万円を優に超えるであろう、物流倉庫の所長もレジ袋の中身は特大カップラーメンだ。スーツを脱いだら、ワーキングプアの作業員とほとんど区別はつかない。


「業績不振」と、1年で作業員を3分の1に減らす

 だが、目を凝らすと歴然とした格差がある。我々は彼の支配下にある。派遣業者の正社員を含め500人近くいた作業員は、所長の判断によって開業1年で3分の1にまで減らされた。理由は業績不振だ。取扱い量の落ち込みもあるが、作業効率の悪さも要因とされる。したがって、人員削減による経費削減を実施するとともに、作業体制の大幅見直しが図られた。

 その結果、当然だが、1人当たりの作業量が大幅に増えた。当初は、日勤者の残業時間が増えたものの、夜勤者が早く帰れるようになり、うまくいったかに見えた。しかし、9月になって荷物量が増えた。そのため、半数の日勤者は夜10時まで、通常朝5時前に終了していた夜勤者全員は朝7時過ぎまで残業するようになった。「年末に向けて、荷物が増えて行くばかりで、これからどうなるのだろう」と、派遣業者の日勤社員はこぼした。

 また、同時に、作業効率の悪さから当初5社あった派遣業者を3社に絞った。そして、10月はさらに1社が撤退した。人員については、残った派遣業者が撤退した業者の人員を引き継いだ上で、不足人員を新たに手配するケースが多い。


はじかれた派遣作業員は「代打」専門要員に

 それは同時に、時給1,000円の派遣作業員の選別も意味する。勤怠評価の思わしくない作業員は、派遣先と派遣元によって選別が行われる。そうしてはじかれた作業員は、選ばれた作業員が急に休む場合や休日要員としてのみ、代わりに来るようになる。

 平日に見なくなった50代男性のDさん。日曜日だけになり、「平日は他の現場に行っている」と教えてくれた。個人の労働力を絞り出すことで、企業という組織を支える仕組みが、多くの派遣作業員が働いているS倉庫でも当然のように行われている。

 末端の現場は、改善はされていない。相変わらず、派遣は搾取されている。大企業が経費節減を実行するための道具として派遣作業員を利用している実態を、S倉庫でもみることができる。

 40代の所長は、経営上の判断をしているだけだろう。ほとんど毎日、倉庫内に入っているので現場がどのような状況にあるかを充分に把握している。現場の責任者として、本社の要求に応えているに過ぎないのだ。

 S倉庫社員の、作業員に対する態度は丁寧で紳士的だ。洗練されていると言い換えたほうがいいかもしれない。大企業の社員として教育され、自覚を持って働いている。個別に話せば気のいい人たちが多い。だが、本社の意向に沿った経営を実践している彼らは常に決断する。彼らにとって派遣作業員は、雇用の調整弁としての位置づけでしかない。


企業判断の基準は合理化、作業員の事情とは無関係

 大手警備会社の下請けとしてS倉庫に入っていた私の現場も9月末で撤退となった。

 撤退の理由はやはり経費節減だ。物流倉庫の警備は大手警備会社が請け負っている。S倉庫が、大手警備会社に経費削減を持ちかけた結果、金探の撤去が提案されたらしい。入退出者の管理はその後、電子錠を取り付けて行われている。

 事業開始当初、実際に、服の下に商品を隠して持ち出そうとした作業員がいた。責任者のSさんがハンディタイプの金属探知器でチェックして、発見した。警察ざたにはしなかったらしいが、その作業員が所属していた派遣会社自体が出入り禁止となった。

 また、トイレ内に商品を隠していたのを、Aさんが発見したこともあるらしい。後で持ち出す計画だったようだ。それは、S倉庫の判断で犯人捜査はせずに商品を回収しただけで済ませた。そうした例をみると、金属探知機は、出入り口を利用した正面切っての商品持ち出しに対し、抑止効果が実証されたと捉えることができる。

 だが、作業メンバーが固定されたことから盗難の懸念は大幅に低下した。人手のかかる金属探知機は不要と判断されたようだ。加えて、現在、24時間体制で行われている作業についても、来期からは夜勤作業が打ち切られ、日勤のみで対応することが検討されているともいう。

 企業は実質的な経営判断を下すだけだ。そこで働く我々の事情については、まず考慮されない。

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